パフ 合唱曲 Puff The Magic Dragon

小学校の音楽の授業で歌われる合唱曲

合唱版『パフ』は、1960年代のポピュラーソング『Puff, the Magic Dragon』を元にした合唱曲。小学校低学年の音楽の授業で歌われるほか、リコーダーや鍵盤ハーモニカ演奏による合奏も行われている。

ドラゴンが登場する「パフ」のストーリーについては、1932年に出版されたアメリカの絵本「カスタード・ザ・ドラゴン Custard the Dragon」が元ネタとされている。

写真:レゴブロックで作ったパフと少年(出典:きまぐれ博物館)

ピーターパンとの関係やその他の考察については、こちらのページ「パフ 歌詞の比較・元ネタ・考察 Puff The Magic Dragon」でまとめられている。

ピーター・ポール&マリーによる1963年リリースの原曲『Puff, the Magic Dragon』の歌詞・日本語訳についてはこちらを適宜参照されたい。

【試聴】由紀さおり『パフ』

パフの様々な日本語歌詞

教育芸術社から出版されている小学生向け音楽の教科書「小学校の音楽3」では、合唱曲『夢の世界を』を作詞した芙龍明子(ふりゅう あきこ)による訳詞の『パフ』が掲載されている。

この音楽教科書での歌いだしの歌詞は、「パフ 魔法の竜が暮らしてた 低く秋の霧 たなびく入り江」。歌詞は3番までしかないが、原曲『Puff, the Magic Dragon』の内容に比較的忠実で、コンパクトにまとまったテンポの良いストーリー展開となっている。

日本語版『パフ』の訳詞は芙龍明子バージョン以外にもいくつか存在する。特に有名なのが、NHK「おかあさんといっしょ」で流れる野上彰バージョン。歌いだしの歌詞は「パフ 魔法の竜が暮らしてた 海に秋の霧 たなびくホナリー」。歌手の由紀さおりも野上版で歌っている。

野上彰バージョンは、芙龍明子バージョン以上に原曲の内容を忠実に訳詞しており、歌詞も5番までと尺が長いので、学校の発表会や学芸会などで合唱するには向いているかもしれない。

ただ、小学生低学年向けの音楽の授業でさらっと扱うには、芙龍明子バージョンぐらいの短めのシンプルな歌詞の方が、音楽教師にとっては「使いやすい教材」と言えそうだ。

もう一つ有名な日本語版『パフ』としては、歌い出しの歌詞が「ふしぎなパフ かいじゅうだ きれいな海から 毎朝おはよう♪」の中山知子バージョンも比較的広まっている。

中山知子版は原曲の内容がある程度シンプルにそぎ落とされ、子供が安心して楽しめる優しい童謡となっている。

別れの理由をどう表現するか

魔法の竜パフと少年ジャッキーは、どの訳詞バージョンでも、歌の最後で悲しい別れを迎えるわけだが、その別れの理由が大きく異なっている。

音楽の教科書ではジャッキーが「旅に出たから」、野上彰バージョンでは「いつしか大人になったから」、中山知子版では「海の向こうの町へ行きたくなったから」と歌詞の中で説明されている。

原曲『Puff, the Magic Dragon』では、「大人になって他のオモチャの方が良くなったから」とあり、野上彰バージョンがこれに最も近い内容と言えるだろう。

子供にとっては「旅に出る」が理解しやすい?

「旅に出る」という歌詞を採用している訳詞は、実際に小学校低学年の児童が歌う場面を想定して、あえて平易な内容の歌詞に調整しているように感じられる。

小学校低学年の児童が『パフ』を歌う場合、原曲に忠実に「大人になったから」としてしまうと、「大人になるとなんでドラゴンと遊ばなくなるの?」といった素朴な疑問を抱かれる可能性を危惧したのだろうか。

もしかすると、「大人になったから」という理由は、聞き手や歌い手が成人の場合に共感できるものであって、まだこの世に生まれて10年前後の小学校低学年には理解が難しい、そういった配慮があるのかもしれない。

歌をシンプルに楽しむために

確かに、学校の授業でうまく児童たちがスッキリと納得できるような補足説明ができればいいが、もしそれに失敗した場合、子供たちの心にモヤモヤとした感情が生まれ、歌やメロディが素直に楽しめなくなってしまいそうだ。大人に対する不信感や、「大人になる」ということに対してマイナスのイメージすら抱かれかねない。

この点、あえて別れの理由を子供にも誤解の少ない「旅に出る」とすることで、パフと少年の「別れの寂しさ」それ自体に児童たちの意識を向けさせ、歌を歌うことの楽しさに意識を集中させる効果を狙っているのだろう。

「やがて大人になり、失われていく純真さや子供心」という子供には若干ピンとこない人生のテーマが原曲に存在するだけに、時間をかけて真正面からこのテーマに取り組むのか、あえてこれを避けてシンプルに音楽を楽しませるのか、学校教育における音楽教材としてこの歌を使うのであれば、子供たちに歌わせる大人たちが予めしっかりと考えておく必要がありそうだ。

絵本版ではジャッキーの娘が登場?

別れの理由はともかくとして、いずれにせよ離れ離れになってしまう魔法の竜パフと少年ジャッキー。これではあまりにも切なく寂しい。

そこへ救いの手を差し伸べるかのように、原曲『Puff, the Magic Dragon』の世界を表現した絵本が2007年にアメリカで出版された。

その絵本では、最後の方のページで、少年ジャッキーによく似た小さな女の子がパフと出会うシーンが描かれているのだ。

彼女は大人になったジャッキーの娘なのだろうか?すぐに女の子はパフと仲良くなり、一人ぼっちで寂しかったパフは新たな友達を見つけることができたようだ。めでたし、めでたし。

関連ページ

カスタード・ザ・ドラゴン Custard the Dragon
パフ原曲の元ネタ。アメリカの詩人オグデン・ナッシュによる1936年の絵本。
Puff, the Magic Dragon 歌詞・日本語訳
アメリカのフォークソンググループ、ピーター・ポール&マリーによる1963年リリースの原曲 歌詞と日本語訳
学校・コンクールで歌う有名な合唱曲
『大地讃頌』、『手紙』、『YELL エール』、『心の瞳』など、小学校や中学校、高校の音楽の授業や校内合唱コンクール、NHK合唱コンクールなどで歌われる有名な合唱曲